ss37 マリア誕生日記念「要らない人なんて居ない!」 目指すはほんわか系・・・のつもりだった マリア一人称形式 -------------------------------------------------------------------------- マリア、最近の自分の存在意義について危惧 ハヤテ→家事 千桜→ナギの姉役 SP指揮→いない 人気投票の結果を見て愕然 済 ↓ 帝「帰ってこないか?」にぐらつく 済 ↓ ハヤテナギ千桜、マリア誕生日について策を練る(伏線) 済 ↓ マリアの疎外感強まる 済 ↓ メイド喫茶に通うようになる 済 ↓ ある日の帰り道、メイド喫茶から出てくるマリアと一緒に帰る 済 ↓ 強い罪悪感、帝のもとへ帰ることを決意 ↓ 誕生日前日、ナギに話を切り出す ↓ ナギ、泣きながらマリアを引っぱたく(ここ重要) ↓ 誕生日、3人の祝福に涙 ↓ END -------------------------------------------------------------------------- どうもこんにちは。三千院家のハウスメイド、マリアです。 今はナギやハヤテ君と一緒にお屋敷を出て一軒のアパートで生活をしています。 最初にここへやってきた時こそ少し心配でしたが、今は順調そのものです。 生活自体は毎日とても楽しいですけど、最近・・・ちょっとした悩みがあるんです。 それは・・・。 夕方。そろそろ夕飯の支度をしないと・・・と思った時です。 「マリアさん、どちらへ?」 「そろそろ夕飯の支度をしないとと思ったんですよ。」 「あ、僕がやるんで大丈夫です。マリアさんは座っててもいいですよ。」 「で、でも・・・」 「いいですいいです。どんどん料理してマリアさんの腕に近づかなくっちゃ・・・!」 ・・・・・・・・・・・・。 最近、台所に立つのはハヤテ君ばっかりなんですよね・・・。 台所だけじゃありません。他にもいろいろ。 確かにお仕事しなくていいのは楽ですけど・・・。 今度はまた別の朝。 今日は平日ですからナギにはちゃんと学校へ行ってもらわないといけません。 ですから私はナギを起こすためにあの子を呼ぼうとします。 「ナギ、そろそろ起きなさ――――」 「おい、そろそろ起きないと遅刻するぞ!」 声の主はもうすでにカチッと制服に着替えている千桜さんでした。 「・・・・・・私は毎日日曜でいい・・・。」 扉の向こうではナギの眠そうな声が聞こえます。 「良くない!起きろ!勉強は学生の本分だぞ!」 「うるさいなぁ・・・。はぁ・・・太陽ってたまには沈んだまんまになってくれればいいのに。」 ナギが部屋から出てきます。 「ありもしない事言うんじゃない!ほらさっさと着替えた着替えた! ・・・あっ、マリアさんおはようございます。」 ナギを引っ張りながら千桜さんが私に挨拶します。 「おはようございます。いつもナギをありがとう。」 「いえ、そんな・・・。」 毅然とした声でナギを促す千桜さん。それに嫌々ながらも従うナギ。 最近はこんな感じで毎日ナギを起こしてくれています。 それでナギの出席率も上がって助かっているのですけど・・・。 最近本当に二人は良いお友達になって、ナギも千桜さんの部屋にいる事が多いです。 自分からそんな友人を作らないあの子にとっては、非常にいい傾向なんですけどね。 いい傾向、なんですけどね・・・・・・・・・・・・。 -------------------------------------------------------------------------- 「はぁ・・・・・・。」 ハヤテ君たちを学校へ送り出した後、私はテーブルで一人ため息をついていました。 (私・・・最近ここに居る意味があるんでしょうか・・・。) 家事全般をハヤテ君がやってるし千桜さんが居ればナギを任せられるし。 そんなに広くないこの家だと掃除だってたかだか知れているし。 SPの皆さんを管理することもなくなりましたし。 元々メイドというお仕事は、一人では手がとても回らない大きな家でこそ成り立つもの。 同じような役割のハヤテ君が居れば必ずしも必要なものではないのです。 以前お屋敷で日々仕事ばかりしていた私は、今の生活が楽ではあるもののかなりその辺りで精神的な疲れを感じていました。 そして極めつけは・・・。 「私、5位ですか・・・?」 今回のランキングにはショックを隠しきれませんでした。 人気を維持して罰ゲームを受ける事も恥ずかしい事ですが・・・私を選んでくださった方が約800人もいなくなってしまった事の方がショックでした。 「ま・・・まぁこういう時もありますよ。次は・・・きっと。」 「まぁアレだ、罰ゲームを受けなくて良かったではないか、な?」 票数を下げても順位をキープしてるあなたたちに言われても・・・。 「そうですよ。1000人以上の方から選ばれてるなんてすごいな〜って思いますよ・・・。私よりも200人くらい多いじゃないですか・・・。」 得票数も上がって、ひとつ上がった千桜さんにそう言われても・・・。 このまま私のいる意味はなくなって、最後には忘れられてしまうのでしょうか? また私の悩みが増えました。 -------------------------------------------------------------------------- そしてそんなある日のことでした。 「はい?おじい様ですか?」 私におじい様から電話がかかってきたのです。 「マリア、久しぶりじゃな。どうじゃ最近は?」 「どうって・・・別に変わった事はありませんよ?」 気持ちは沈みがちだけれど、生活については順調そのものですからね。 それにおじい様に余計な心配をさせるわけには・・・。 私はそう思っておじい様に返したのですが、 「そうか・・・ワシは変わったような気がするがのう。」 「どこがです?」 「何だかワシにはお前の声がいつもより暗くなってるような気がするんじゃよ。・・・・・・それは気のせいではないじゃろう?」 ・・・・・・さすがはおじい様ですね。どんな事でも見破られてしまいます。 「いっ、いえ決してそんな事は・・・。」 「まぁ深入りはせんよ。もうすぐお前も18じゃし、言いたくない事の一つや二つもあるじゃろう。・・・じゃがなマリア、行き詰まった時はいつでもワシのもとへ帰ってきても構わんぞ。ゆっくり休んで自分を見つめなおすのも・・・人生には必要な事じゃ。」 「!?」 「別にナギに仕える事だけがお前の人生ではないんじゃからな。・・・・・・どうじゃ、一度帰ってこんか?」 珍しく心配してくれているおじい様の言葉が、私にはとても温かく感じました。 でも・・・。 「そ、それは・・・。」 自分が役に立っていないのではないか?・・・そんな身勝手な理由で主を放り出して自分が休むなどあってはならないと、私の良心がぐらついた私を押さえつけます。 「まぁ強制はせんよ。ただ、いつでもワシは待っておるからの。ではな。」 ・・・・・・・・・ おじい様の所へ帰る、か・・・。それもいいのかもしれません。 でもそんな事をしたら私は・・・! ですから何とか断りましたが、私にはおじい様の言葉が残響していました。 -------------------------------------------------------------------------- 「ただいま戻りました。」 「ただいまー。マリア今帰ったぞ。」 「お帰りなさい。」 今日もハヤテ君たちが3人揃って帰ってきました。 「これ預かってくれ。机の上にでも置いといてくれればいいから。」 「はい?」 ナギは私に学校の鞄を預けます。 「じゃあ行くぞハヤテ、お茶を用意だ!」 「はい!すぐ行きます!」 そしてナギとハヤテ君は2階へ忙しそうに上がっていきました。 2人とも千桜さんの部屋にでも行ったのでしょうか。 ここのところ最近はこのパターンが常態化しています。 夕食前にハヤテ君だけ降りてきて、支度をして夕食が終わったらまた2階へ上がっていくんです。 何か・・・・・・楽しい事があるんでしょうか。 お屋敷にいた頃はナギの話し相手にもよくなってあげていた頃が懐かしいです。 いい事なんですけれど、やはり私は少し寂しかったです。 私があの子にしてあげられる事はもう・・・なくなってしまったんでしょうか。 そういえば最近、私に通う所が出来つつありました。 「いらっしゃいませご主人様〜。」 ・・・・・・・・・ ・・・本業でメイドをしている私が行くのは少し変な気もしますけど。それもメイド服で来ていますし・・・。 本業の私は咲夜さんのメイドさんがメイド喫茶からスカウトと聞いて・・・興味があったんです。どんな事をしているのかなって。 最近は日中暇な事が多いですし、ついうっかりはまってしまったんですよね・・・。 日中みんながいない事をいい事に自分は時間を持て余して一人暇をつぶしているなんて・・・。日に日に罪悪感が増していきました。 そしてある日、 「ありがとうございました〜。」 カランと音を立ててさあ帰ろうと道に出た時、 「!!」 「あっ、マリアさんじゃないですか〜。」 私はハヤテ君たちに会ってしまったのです。 「ホントだ。おいマリア、なんでこんな店に行ってたんだ?」 「へぇ〜・・・意外ですね。本職の方がこんなところへ来られるなんて。」 「はっ、ハヤテ君、何故こんな時間に・・・?」 普通この時間ならまだハヤテ君たちは学校のはず・・・。 あっ、ひょっとして今日って・・・ 「何故って・・・今日が白皇の終業式だからですよ。」 「年中半日でも私は構わんがな。」 「・・・・・・・・・。」 予感が当たりました。 不思議そうな顔をして私を見る3人に、私の罪悪感は最高潮になります。 もう・・・・・・ハヤテ君たちの顔を正視する事も出来ませんでした。 私は・・・ 「マリアさんっ!?」 「お、おいマリアどこへ行く!?」 私はハヤテ君たちの前から逃げ出してしまいました。 -------------------------------------------------------------------------- 罪悪感に押しつぶされそうで、私はもうここには居られないと思いました。 「もう私は役に立てないんだ」・・・けれどそう思っても行くあてはありませんでした。 だから結局帰りついた先は・・・自分の部屋でした。 ・・・・・・おじい様の所へ帰ろう。 すごく悩みました。でもその方がナギにとっても・・・多分良いんでしょう。 そう決意した私は、おじい様へと電話をかける事にしました。 「おぉマリアか。どうした?」 「・・・そちらへ帰っても・・・いいですか?」 「・・・・・・何か困り事があったようじゃな。前に言った通り、いつでも戻ってきて構わんぞ。しかし・・・」 「・・・何でしょうか?」 「ナギになぜお前がワシのところへ戻るのか、ナギが納得いく説明をするようにな。でなければまたワシがナギに怒鳴られる事になるし、お前だって『戻る意味』が無くなってしまうじゃろう。・・・・・・良いな?」 「・・・・・・はい。」 ナギに納得いくように説明する、ですか・・・。 「おーいマリア、さっきは何で私たちから逃げたりなんか・・・」 ドアの向こうでナギが私に声をかけます。 「・・・・・・・・・すいません。あんな所で会うからちょっとびっくりしちゃったんですよ。」 --------------------------------------------------------------------------