- 夢語り - 終わらす為の出発 振り返りもしなかった故郷の景色 根拠なき自信と夢だけ持って拡げた風呂敷 時は熟し 掴んでいたのは故郷へ向かう乗車切符  挫折という終点から折り返す都での最後の夜 出ていく支度にあまり時間は掛けられない 汚れきった借間の壁の端にゴミと共に捨ててく夢 山になった その絶景を眺めて 未来予想図を皺くちゃに握り潰した くすんだ壁紙が歴史を描いた 低廉な屏風に見えた 実に短命 この町は煩さすぎた それが精一杯の言い訳 悔しさ 情けなさ 恥ずかしさ 踏ん切りの悪さが幾つも重なって 滲んで何色か判別できない 冗談でも綺麗な色彩とは言えないが この色彩だけが俺の足跡 壊れやすく どうしようもなく さくい 伝わらない無理解との歯がゆさもそのままに 全て済んだ事 分かり敢える所だけに寄り集まれば それでいい 書き換えの効かないmy life 書き換わるnext life ぶつかり合った人々との痣の数が 大童だった事を物語る 叶う事はなかった夢を酒で茶化す いきつけの酒場の名は 「夢主」最後に行っておきたい 傾けるグラス  名も知らぬ負け犬達が傷みを嗅ぎつけ囲む 合わすグラス 喉からこみあげる 口惜しさが何か言いたい 零したら傷口に沁みる 言えば空笑に笑われる 虚しさに輪を掛ける程子供じゃない  それを聞きたがるほど負け犬達も野暮じゃない ため息が隙間から優秀な飼い犬にばれぬよう ばれぬよう 負け犬達が遠吠える懸命に 懸命に 確信に触れられぬよう懸命に 懸命に 顔には決してださないが はみだす悲愴を堪える精一杯を呑み込む為に  もう一杯 いつだって報われぬ者で溢れてる  気が抜けるまで 気が済むまで 気がつくまで 浴びる 「夢主」の大将に八つ当たり 悪態ついて扉を強く閉める いつも通り これが別れの礼儀 これがまた来る証 嘸かし 今日しかない  今日の夜風を吸ってはく 負け犬達の背中を見送りもせず   其々 惨苦へと帰っていく ネオンがあちこちでビリっと鳴き 疲れきった弱者を脅かし眠らせない 町は労りもせず  出ていく者を追わず 来る者を拒まず  留まる者を讃えず 釣り合いを保つ 成功 栄光 幻滅 奈落の蜃気楼を絶えず怪しく映す  まるで生きもののように 空腹を満たす為に 容赦なく 躊躇いなく 義理もなく 生命を呑み込む  この町をはいずりまわる無機質なニュアンスを残し 驕り高ぶる手前勝手な真新しい鉄骨を蹴飛ばす  街頭が孤独の門出を祝う 未完成から始まる岐路  再会はなくとも負け犬達よ どうか どうか 生きていく篝だけは絶やさず  はしゃいだ夜が嘘でも ブルースは継がれ 夢に群がる目をギラつかせた新参者の野良犬達を横目に 酔いつぶれてアスファルトに寝転ぶ 落ち葉を枕に 涙に咽び眠る 都 夢語り